
医療法人の承継や売却を考えたとき、最初に気になるのは「いくらで譲渡できるのか」「手数料を含めて総額はいくらか」という点だと思われます。
ただ、医療法人のM&Aには株式譲渡のような単純な相場観が当てはまりにくく、規模・立地・収益性・診療科・人材などで価格が大きく変動します。
本記事では、専門家の解説で一般的とされる評価手法(EV/EBITDAマルチプル法、純資産価額+利益年数法)と、見落とされやすい仲介手数料の相場感を整理します。
「高く売る」だけでなく、引継ぎ後に現場が混乱しない進め方まで見通せるようになります。
医療法人m&a相場は「利益倍率+資産」で決まることが多いです

医療法人m&a相場は固定された価格表があるわけではなく、個別事情により決まります。
そのうえで、リサーチ結果では、医療法人の評価はEV/EBITDAマルチプル法(医業利益に2〜7倍)、または純資産価額+営業利益の2〜5年分が用いられることが多いとされています。
取引規模は数百万円〜数億円まで幅があり、2020年代に入って医療法人M&Aは後継者不足や事業拡大ニーズから活発化していると指摘されています。
また実務上は、中小医療法人では医業利益の3〜5年分が相場として定着しつつあるという見方が複数の専門家解説で示されています。
相場が一律にならない理由は「評価の前提」が案件ごとに違うためです

評価手法は主に2系統で、どちらも「利益」と「資産」を見ます
医療法人のM&A価格は、次の考え方で説明されることが一般的です。
EV/EBITDAマルチプル法(医業利益×倍率)
リサーチ結果では、医業利益(EBITDA相当)に2〜7倍を掛ける方法が紹介されています。
近年はこのマルチプル法が主流で、特に中小医療法人では3〜5倍が目安として語られるケースが多いとされています。
純資産価額+営業利益の2〜5年分
もう一つは、純資産(資産−負債)に、営業利益の2〜5年分を加える考え方です。
リサーチ結果の例として、営業利益2,000万円×3年=6,000万円に純資産4,000万円を足して1億円という試算が示されています。
医療法人と個人クリニックで「営業権」の見方が変わります
同じクリニック承継でも、個人か医療法人かで評価の出し方が変わると言われています。
リサーチ結果では、個人クリニックは資産の時価+営業権(1〜3年分)、医療法人は法人譲渡の形を取りやすく営業権(2〜5年分)が高評価されやすいと整理されています。
これは、引継ぎ後の運営体制や許認可、雇用の継続性などが評価に影響するためと考えられます。
価格を動かすのは「院長依存度」「人材」「地域性」などの非財務要因です
医療はサービス業の側面が強く、数値だけで決まりにくい領域です。
リサーチ結果でも、相場に影響する要因として次が挙げられています。
- 院長依存度(院長さんが退くと患者数が落ちる構造か)
- 収益性(診療報酬の構成、稼働率、原価・人件費バランス)
- 地域(人口動態、競合、紹介ネットワーク)
- 成長見込み(増床余地、診療科拡張、分院展開の可能性)
- のれん(ブランド力)(地域での信頼、口コミ、紹介)
特に人材面は、引継ぎ後の診療提供体制に直結するため、買い手が慎重に見るポイントになりやすいと思われます。
仲介手数料の「最低報酬」が小規模案件の負担になりやすいです
医療法人M&Aでは、譲渡価格だけでなく手数料体系も重要です。
リサーチ結果では、仲介手数料はレーマン方式で譲渡価格の1〜5%(例として5億円以下は5%など、金額帯で料率が下がる)とされ、加えて最低報酬が500万円〜2,500万円と幅があるとされています。
また、着手金は50〜200万円が目安とされる一方、近年は着手金無料の会社が増加傾向にあるとも示されています。
さらに中間金がある場合、成功報酬の10〜20%が中間金として設定されるケースがあるとされています。
小規模案件では「最低報酬」が実質的に重くなるため、複数社の提案と契約条件の比較が重要です。
医療法人m&a相場の試算イメージ(3例)

ここでは、リサーチ結果で示されている考え方に沿って、相場感をつかむための試算例を紹介します。
実際の価格は、負債内容、設備更新、役員退職金、運転資金、診療報酬の傾向などで変わる可能性があります。
例1:マルチプル法(医業利益×3〜5倍)で見る中小医療法人
医業利益(EBITDA相当)が2,000万円の医療法人を想定します。
- 倍率3倍:6,000万円
- 倍率5倍:1億円
リサーチ結果では、中小医療法人で3〜5年分が相場として定着しつつあるとされています。
このレンジの中で、院長さん依存が低く、スタッフ定着が良い場合は上振れする可能性があります。
例2:純資産+営業利益の年数で見る(リサーチ例に近い形)
営業利益2,000万円、純資産4,000万円の場合を想定します。
- 営業利益2,000万円×3年=6,000万円
- 6,000万円+純資産4,000万円=1億円
リサーチ結果でも同様の例が示されており、資産が厚い法人ではこの考え方が説明に使われやすいです。
一方で、設備の老朽化が進んでいる場合は、買い手が更新投資を織り込んで調整する可能性があります。
例3:仲介手数料を含めた「手取りの見え方」
仮に譲渡対価が8,000万円で、レーマン方式の料率が5%相当だとすると、単純計算の成功報酬は400万円になります。
ただしリサーチ結果では、仲介会社によって最低報酬が500万円〜2,500万円とされます。
この場合、計算上は400万円でも、契約上は最低報酬の500万円(またはそれ以上)が適用される可能性があります。
着手金・中間金の有無も含め、見積りを「総額」で比較することが重要です。
例4:病院規模では数億円超の事例も見られます
リサーチ結果では、病院規模の大型案件で数億円超の取引事例が見られるとされています。
病床数、稼働率、医師体制、地域医療での役割などが複合的に評価されるため、同じ利益水準でも条件により価格差が出る可能性があります。
医療法人M&Aで選ばれやすいスキームと注意点
代表的なスキームは4つです
リサーチ結果では、医療法人のM&Aスキームとして次の4種が挙げられています。
- 出資持分譲渡
- 役員交代
- 事業譲渡
- 合併
どの方法が適するかで、手続き、税務、許認可、引継ぎの難易度が変わる可能性があります。
税務・許認可・雇用の論点は早めの確認が無難です
リサーチ結果でも、税務・許認可確認は必須とされています。
医療は規制産業であり、一般事業会社のM&Aよりも確認事項が多い傾向があります。
また、院長さんの退職金設計や役員構成、借入金の条件変更などが価格交渉に影響することもあるため、専門家と一緒に論点を棚卸しするのが現実的です。
まとめ:医療法人m&a相場は「利益倍率」と「手数料の最低報酬」まで見て判断します
医療法人m&a相場は、固定の相場表で決まるのではなく、案件ごとの条件で変動します。
リサーチ結果に基づく要点は次のとおりです。
- 評価はEV/EBITDAマルチプル法(医業利益×2〜7倍)や純資産+営業利益の2〜5年分が一般的とされています
- 2020年代に入り医療法人M&Aは活発化し、中小では医業利益の3〜5年分が目安として語られやすいです
- 仲介手数料はレーマン方式(1〜5%)が多い一方、最低報酬500万円〜2,500万円が小規模案件の負担になりやすいです
- 価格は、収益だけでなく院長依存度・人材・地域性・のれんなどで動く可能性があります
納得できる条件に近づけるために、最初にやると良いこと
相場を知ることは大切ですが、医療法人M&Aは「相場どおり」よりも「条件の整備」で結果が変わりやすい分野だと考えられます。
まずは次の順で進めると、判断がしやすくなります。
- 直近3期の決算と、医業利益(EBITDA相当)の概算を整理します
- 院長さん依存の度合い(患者動向、紹介、診療体制)を言語化します
- 仲介手数料の最低報酬、着手金、中間金の有無を含めて複数社で比較します
不確実性が高いと感じる場合でも、試算と論点整理を先に行うことで、交渉の場で説明できる材料が増えます。
結果として、譲渡価格だけでなく、引継ぎ条件やスケジュールも含めて、納得感のある着地に近づく可能性があります。