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第一種金融商品取引業 できることは?

第一種金融商品取引業 できることは?

株式や債券の売買を扱うビジネスを始めたいと考えたとき、あるいはFXや証券CFDなどの店頭デリバティブを提供したいと考えたときに、避けて通れないのが「第一種金融商品取引業」です。
一方で、第一種と第二種の線引き、引受けや顧客資産の預かりがどこまで可能か、近年話題のセキュリティトークン(STO)や非上場株の仲介はどう整理されるのかなど、実務上の疑問は多いと思われます。
この記事では、金融商品取引法上の位置づけを踏まえつつ、第一種金融商品取引業で「できること」を業務類型ごとに整理し、近時の制度変更(2024年改正)にも触れながら、検討時に押さえるべきポイントを中立的に解説します。

第一種金融商品取引業でできることの全体像

第一種金融商品取引業でできることの全体像

第一種金融商品取引業(金融商品取引法第28条第1項に規定)は、主に流動性の高い有価証券(株式・債券等)を対象に、売買の仲介・代理や引受け、店頭デリバティブ取引(FX、証券CFD、バイナリーオプション等)、そして取引に伴う顧客資産の管理などを業として行う枠組みです。
旧証券取引法の「証券業」と「金融先物取引業」を統合した性格を持ち、典型例は証券会社とされています。

言い換えると、第一種は市場取引・店頭デリバティブ・引受け・顧客資産管理といった、資本市場の中核機能に近い業務を幅広く担える一方、登録要件や監督が相対的に厳格と整理されます。
「何ができるか」と「どの水準の管理体制が求められるか」が表裏一体だと理解しておくことが重要です。

第一種が広い業務を担える理由

第一種が広い業務を担える理由

金融商品取引法上の射程が「市場性の高い商品」と「デリバティブ」に及ぶため

第一種金融商品取引業が対象とする中心領域は、株式・社債などの有価証券の売買に関する業務と、店頭デリバティブ取引です。
リサーチ結果でも、有価証券の売買・勧誘、引受け、店頭デリバティブ(FX、証券CFD、バイナリーオプション)が主な業務範囲として整理されています。
これらは投資家保護上の影響が大きく、価格形成や流動性にも直結するため、第一種の枠組みで包括的に規律されていると考えられます。

顧客資産の「預かり」を業務として位置づけられるため

第一種の特徴として、取引に関連する金銭・有価証券の預かり(有価証券等管理業務)が挙げられます。
顧客資産管理は、破綻時の影響が大きく不正リスクも高い領域です。
そのため、第一種では顧客資産管理を含めた内部管理体制が求められ、監督や検査の対象にもなりやすいとされています。

登録要件が厳格であることが「できること」の裏付けになるため

2025年時点の整理として、第一種の登録要件は最低資本金5,000万円、自己資本規制比率120%以上などが維持されているとされています。
また、会社形態(株式会社で取締役会・監査役設置が求められる整理)、役員の専門知識・経験、コンプライアンス・リスク管理部門を含む内部管理体制がポイントとされています。
これらの要件は参入障壁になり得ますが、反面として、引受けやデリバティブ提供、顧客資産の預かりといった高リスク業務を担う前提条件とも言えます。

近時は新領域(STO、PTS、暗号資産関連デリバティブ)への対応も論点になるため

実務では、セキュリティトークン(STO)やPTS(私設取引システム)など、制度・インフラの変化に応じて第一種業者が関与する領域が広がる傾向があります。
リサーチ結果でも、STO、PTS、暗号資産関連デリバティブが新業務対応の例として挙げられています。
ただし、具体的に「何が第一種の登録だけで足りるか」は、取扱商品の法的位置づけや、兼業規制・自主規制ルール等との関係で変わる可能性があります。

第一種金融商品取引業でできること(業務別の具体像)

第一種金融商品取引業でできること(業務別の具体像)

株式・債券などの売買の仲介・代理、勧誘

第一種の中核は、有価証券の売買に関する仲介・代理や勧誘です。
上場株式の売買注文を受けて市場へ取り次ぐ、顧客に対して商品説明を行い取引を成立させる、といった証券会社の典型業務がここに含まれます。
「流動性の高い有価証券を広く扱う」ことが第一種のイメージに近いと考えられます。

有価証券の引受け(資金調達のハブ機能)

企業が株式や社債を発行して資金調達する際、引受けを行うのは第一種業務の重要な領域です。
引受けは市場への供給と投資家への販売をつなぐ機能であり、価格形成と投資家保護の双方に影響します。
このため、第一種業者には審査・販売管理・利益相反管理など、実務上の統制が強く求められる傾向があります。

店頭デリバティブ取引(FX、証券CFD、バイナリーオプション等)

第一種で「できること」として検索ニーズが高いのが、FX等の店頭デリバティブ提供です。
リサーチ結果にあるとおり、第一種の業務範囲には店頭デリバティブ取引(FX、証券CFD、バイナリーオプション)が含まれます。
店頭取引は、取引所取引と比べて業者側の価格提示やカウンターパーティーリスクが論点になりやすいため、適合性、説明義務、システムリスク管理などが重要になります。

顧客資産の管理(取引に伴う金銭・有価証券の預かり)

第一種では、取引に関連して顧客から金銭や有価証券を預かり、管理する業務も射程に入ります(有価証券等管理業務)。
顧客資産の分別管理、入出金管理、権利処理など、オペレーション品質が投資家保護に直結します。
近年は行政処分事例が増加傾向とされ、リスク管理強化がトレンドと整理されていますので、体制整備の重要性は増していると思われます。

商品関連市場デリバティブ取引への関与

リサーチ結果では、第一種の業務範囲として商品関連市場デリバティブ取引も挙げられています。
実際に何を提供できるかは、取引形態や商品設計、必要な許認可・自主規制の整理によって変わる可能性があります。
検討時は、商品設計段階で法令上の該当性を確認することが現実的です。

制度改正で広がる可能性がある領域

2024年改正で新設された「非上場有価証券特例仲介等業務」

最新動向として重要なのが、令和6年(2024年)の金融商品取引法改正です。
リサーチ結果によれば、この改正により「非上場有価証券特例仲介等業務」が新設され、第一種業者の登録要件を緩和した形で、非上場有価証券の特定投資家向け媒介・私募取扱いが可能になったとされています。
また、短期間の顧客資金預かりが認められ、自己資本規制比率等の規制が一部除外されると整理されています。

「非上場株を扱いたい」ニーズとの関係

非上場株式の流通や資金調達支援は、スタートアップ領域の拡大とともに関心が高まっています。
ただし、誰にでも販売できるわけではなく、特定投資家向けなどの枠組みで整理される点が実務上の要点になります。
「第一種=何でも扱える」ではなく、投資家区分と勧誘・媒介の方法が重要だと考えられます。

検討時に混同しやすい「第二種」との違い

第一種と第二種の違いは、「扱える商品」と「規制の重さ」に直結します。
リサーチ結果では、第一種は市場インフラ業務が多く、資本要件・監督が厳格である一方、第二種は最低資本金1,000万円で私募中心と整理されています。
したがって、上場株式の売買仲介や店頭デリバティブなどを想定する場合、第一種の検討が中心になりやすいと思われます。

第一種での事業イメージが湧く具体例

例1:ネット証券として株式・ETFの売買仲介を行う

個人投資家の口座を開設し、上場株式やETFの売買注文を受けて市場へ取り次ぐモデルです。
この場合、売買の媒介・取次ぎに加えて、顧客資産の管理、システムの安定運用、広告・勧誘管理などが重要になります。
流動性の高い有価証券を継続的に取り扱う点で、第一種の典型に近いと考えられます。

例2:FX業者として店頭デリバティブ(FX)を提供する

店頭で為替証拠金取引(FX)を提供し、顧客の証拠金を管理しながら取引を成立させるモデルです。
リサーチ結果のとおり、FXは第一種の業務範囲に含まれます。
一方で、価格配信、ロスカット、カバー取引、システム障害時対応など、リスク管理の難易度が高い領域でもあります。
「収益モデル」と同じくらい「管理モデル」の設計が重要だといえます。

例3:引受け業務を通じて社債発行を支援する

企業の社債発行に関し、引受けを行い投資家へ販売するモデルです。
引受けは資金調達の要である一方、ディスクロージャー、投資家への説明、販売管理、利益相反管理など、統制が求められます。
この領域に参入する場合、社内審査機能や引受け審査の手続設計が重要になります。

例4:2024年改正を踏まえ、特定投資家向けに非上場有価証券の媒介を行う

非上場有価証券について、特定投資家向けに媒介や私募取扱いを行うモデルです。
リサーチ結果では、非上場有価証券特例仲介等業務により、第一種の登録要件を緩和した形で実施可能になったとされています。
ただし、対象投資家の範囲、勧誘方法、資金の一時預かりの運用、情報管理など、制度趣旨に沿った設計が求められる可能性があります。

まとめ:第一種金融商品取引業で「できること」を整理

第一種金融商品取引業でできることは、金融商品取引法第28条第1項の枠組みのもと、株式・債券等の売買の仲介・代理や勧誘有価証券の引受け店頭デリバティブ(FX、証券CFD、バイナリーオプション等)、そして取引に伴う顧客資産の管理まで幅広い点にあります。
その分、最低資本金5,000万円、自己資本規制比率120%以上といった要件や、コンプライアンス・リスク管理体制の整備が重要になります。
また、2024年改正で非上場有価証券特例仲介等業務が新設され、特定投資家向けの非上場有価証券の媒介・私募取扱いが可能になった点は、近時の実務上の注目点です。

次の一歩を踏み出すために

第一種金融商品取引業は、できることが多い一方で、体制整備と継続的な運用が成否を分ける領域です。
行政処分事例が増加傾向とされる状況も踏まえると、参入検討では「登録の可否」だけでなく、登録後に求められる内部管理・システム・顧客資産管理を現実的に運用できるかを早い段階で点検することが有益です。
もし事業構想が固まりつつある場合は、想定する商品・取引形態を棚卸しし、第一種が必要な範囲、第二種で足りる範囲、追加で必要になり得る許認可や自主規制対応を整理していくと、判断が進めやすくなると思われます。