
会社を買収したい、あるいは会社を売却したいと考えたとき、最初につまずきやすいのが「いくらが妥当なのか」という価格の問題です。
しかし、会社買収の価格は不動産のように明確な相場表があるわけではなく、財務内容や将来性、買い手側のシナジーなどで大きく変わります。
一方で、実務では目安となる考え方が整理されており、代表的な算定方法(年倍法、EBITDA倍率法など)を理解すると、提示価格の妥当性を判断しやすくなります。
この記事では、会社買収 相場の基本、よく使われる算定方法、具体的な計算例、仲介手数料の相場、交渉で注意すべき点までを中立的にまとめます。
会社買収の相場は「固定価格」ではなく目安で決まります

会社買収の相場は、結論として明確な固定相場は存在しません。
実務上は、企業価値評価の代表的手法をベースに、買い手・売り手の交渉で最終価格が決定されます。
中小企業では簡易的な目安として、時価純資産+営業利益の2〜5年分(年倍法)が用いられることが多いとされています。
また、近年は財務状況だけでなく、将来性や無形資産も織り込む評価が主流で、希望価格だけではなく市場の需要も影響すると整理されています(2025年9月時点の解説を含むリサーチ結果より)。
相場が一律にならない理由と、価格を決める代表的な考え方

企業買収は「モノ」ではなく「将来の稼ぐ力」を買うためです
会社買収は、設備や在庫といった資産だけでなく、将来の利益創出力や人材、顧客基盤、ブランドなども含めて引き継ぐ取引です。
そのため、同じ売上規模でも、利益率、継続性、成長性によって価格が変わると考えられます。
中小企業で使われやすい「年倍法(簡易法)」
年倍法は、相場感をつかむために使われやすい方法です。
一般に、次の形で表されます。
- 企業価値(目安)=時価純資産+営業利益×2〜5年
リサーチ結果でも、中小企業の簡易的な相場として「時価純資産+営業利益の2〜5年分」が用いられるとされています。
ここで重要なのは、2〜5年の「年数」は固定ではなく、業種、景気、成長性、リスクなどにより変動し得る点です。
投資家・買い手が重視しやすい「EBITDA倍率法」
EBITDA倍率法は、キャッシュ創出力に近い指標であるEBITDAに倍率を掛けて企業価値を見積もる考え方です。
リサーチ結果では、次のような目安が示されています。
- 企業価値(目安)=EBITDA×3〜8倍+現預金-有利子負債
EBITDA倍率の幅(3〜8倍)は、業種、成長性、収益の安定性、買い手のシナジー見込みなどで変わる可能性があります。
最終価格を動かす要因は「利益」と「需要」と「シナジー」です
リサーチ結果で挙げられている通り、価格に影響する主な要因は次の通りです。
- 利益額(EBITDA、営業利益など)
- 市場動向(買い手の多さ、業界再編の流れなど)
- シナジー効果(販路拡大、コスト削減、技術獲得など)
- 業種・成長性(将来の伸び、参入障壁、人材確保難易度など)
同じ会社でも、買い手によって「欲しい理由」が異なるため、提示される価格が変わることは珍しくありません。
会社買収の相場感がつかめる計算例

年倍法の例:時価純資産2,000万円、営業利益1,000万円の場合
リサーチ結果の例では、次のように整理されています。
- 時価純資産:2,000万円
- 営業利益:1,000万円
- 年数:2〜5年
この場合、企業価値の目安は4,000〜7,000万円とされています。
「年数」をどこに置くかでレンジが大きく変わるため、根拠(成長性、顧客の継続率、属人性の強さなど)を言語化して交渉することが重要です。
EBITDA倍率法の例:EBITDA1億円、倍率5倍の場合
リサーチ結果の例では、次の計算が示されています。
- EBITDA:1億円
- 倍率:5倍
- 現預金:2,000万円
- 有利子負債:1,000万円
この場合、企業価値の目安は5億1,000万円とされています。
EBITDA倍率法は、買い手が投資回収を考える際に使いやすい一方、EBITDAの定義(何を足し戻すか)で数値が変わる可能性があるため、算定根拠のすり合わせが必要です。
休眠会社の相場:30〜65万円程度が目安とされています
事業会社の買収とは別に、休眠会社の売買が検討される場面もあります。
リサーチ結果では、休眠会社の相場について、概ね次の目安が示されています。
- 資本金1,000万円以上の有限会社:30万円程度
- 事業用株式会社:35〜65万円程度
休眠会社は「事業の稼ぐ力」を買う取引ではないことが多く、一般的なM&Aの相場観(利益倍率)とは別物として理解しておく必要があります。
仲介手数料の相場:着手金と成功報酬を事前に確認します
会社買収・売却では、仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)さんを利用することがあります。
リサーチ結果では、仲介手数料の相場として次が挙げられています。
- 着手金:50〜500万円(完全成功報酬制で着手金不要のケースも増加傾向)
- 成功報酬:レーマン方式(例:5億円以下は5%で、以降は段階的に低下)
また、税金や専門家費用も含めた総費用は、売却価格の5〜10%程度になる可能性がある点が注意事項として示されています。
交渉で失敗しないための注意点
「希望価格」だけでは決まりにくく、市場需要も影響します
2025年9月時点の整理を含むリサーチ結果では、M&A取引価額に明確な相場はなく、希望価格だけでなく市場需要が影響するとされています。
つまり、売り手さんが高値を希望しても、買い手候補が少ない局面では成立しにくい可能性があります。
無形資産(人・顧客・技術)をどう見える化するかが重要です
財務諸表に表れにくい価値が、買収価格に反映されることがあります。
例えば、次のような要素です。
- 主要顧客との契約の継続性
- リピート率、解約率、LTVなどの指標
- 特定のキーマン依存の度合いと引継ぎ計画
- 独自技術、ノウハウ、許認可
買い手さんが評価しやすい資料に落とし込めるほど、交渉が進めやすくなると考えられます。
簡易算定ツールは便利ですが、最終判断の代替にはなりません
リサーチ結果では、譲渡価格算出ツールの活用が進んでいる点も挙げられています。
ツールは相場感の把握に役立ちますが、個別事情(簿外債務リスク、偶発債務、在庫評価、取引先集中など)を織り込むには限界があるため、最終的には専門家さんの確認が推奨されます。
会社買収の相場は「算定方法の理解」と「交渉材料」で精度が上がります
会社買収の相場は固定ではなく、年倍法やEBITDA倍率法などの評価手法を基に、買い手・売り手の交渉で決まります。
中小企業では、時価純資産+営業利益の2〜5年分が簡易的な目安として用いられることが多いとされています。
一方で、近年は将来性や無形資産も重視され、市場需要やシナジーの有無で価格が動く点が重要です。
さらに、仲介手数料はレーマン方式が一般的で、完全成功報酬制の拡大も見られる一方、総費用が売却価格の5〜10%程度になる可能性があるため、資金計画まで含めた検討が必要です。
次に取るべき行動は「相場の言語化」と「比較可能な提案づくり」です
会社買収や会社売却は、相場を調べただけでは結論が出にくい分野です。
そのため、まずは年倍法やEBITDA倍率法でレンジを試算し、そのレンジになる理由(成長性、リスク、引継ぎ体制、シナジー余地)を整理すると前に進みやすくなります。
加えて、仲介会社さんや専門家さんに相談する場合は、手数料体系(着手金の有無、成功報酬の算定基準、最低報酬)を比較し、納得できる形で進めることが大切です。
相場は「正解」ではなく「交渉の出発点」です。
根拠ある数字を持って検討を始めることが、結果として納得感の高い取引につながると考えられます。